第11章 この世界でのお仕事
「へぇー白ひげが言ってたことはほんとだったんだな!
まさか本当に来るとは思わなかった」
「お頭…
あんたあれだけ必要なとき以外は珠割るなって言われてたのに結局割ったのか?」
「悪い悪い
だってあーいうのもらったら試したくなるだろ?」
「はぁ…」
恋歌の目の前まで来ると赤い髪をした麦わら帽子をかぶった男は目線を合わせるように少し腰を曲げる。
「あんたか?
白ひげんとこのやつらが言ってた助っ人っていうのは」
『一応そうですね
しかし私が見た限りでは今回私が助っ人するようなところは何もないように思えるのですが』
「あー、悪いなあんた
来てくれたのにうちのお頭が悪戯で珠割っちまってよ」
そう言ってくれたのは黒い髪を首の後ろ辺りでくくっている目付きの鋭い男だった。
『いえ、ですがあの珠は一回きりの物ですので、今回私は呼ばれてここまで来ましたのであの珠の効果はなくなってしまいましたがよろしいですか?』
その恋歌の言葉に驚いたのは赤い髪の男だった。
「えー!
なぁ悪かったって!
もう一回だけあの珠くれよ
今回呼んだのは謝るからさ」
この通り!と言って恋歌の目の前で手を合わせている男は本当に船長なのだろうかと思う。
しかし後に四皇と呼ばれるこの海賊団に借りを作っておくのも悪くないと考えた。
『では今回のは貸しにしておきます
これをどうぞ』
そう言って渡したのは今回割られたものと同じ珠。
「おお、ありがとうな」
子どものようににかっと笑う男に恋歌も無意味に呼ばれたことについてはもういいかと思った。
『では私はこれで帰らせていただきますね』
くるりと体を反転させるとパシッっと腕を掴まれた。
もちろん掴んだのは赤髪海賊団船長。
『何か?』
そのまま船長は笑顔で
「まぁせっかく来たんだゆっくりしていけよ」
と言った。
周りの、特に副船長あたりが深い溜め息をついたのは見ないことにしようと思う。