第8章 誕生日
エースは満足したような顔で"もう食えねぇ"と言いながらソファーに寝転がりお腹をさすっている。
その頭は恋歌の膝の上に乗っている。
所謂膝枕だ。
恋歌の手で髪を透くように撫でられてエースはうとうとし始める。
『ねぇエース?』
エ「…ん?」
殆ど寝かけていたエースだが必死に返事を返す。
『私からも誕生日プレゼントあるんだけど…』
そこまで聞いてほとんど意識のなかったエースががばっと勢いよく起き上がる。
『わっ、びっくりした』
エ「母ちゃんが、俺に…?」
『当たり前じゃない
息子の誕生日に何にもあげない母親はいないよ
はい、これどうぞ』
そう言って渡されたのは長方形の箱が綺麗にラッピングされたものだった。
エ「開けてもいいのか?」
『もうエースの物だからね』
エースは綺麗にラッピングされた物などはじめて貰ったため、びりびりに裂いて開けてはいけないような気がした。
セロハンを丁寧に剥がして紙を外し、箱だけを取り出す。
箱を開けてみると中には小さなオレンジの石が付いたペンダントが入っていた。
エースはそれを慎重に取りだし手に置いてみる。
エ「ペンダント?
こんなの俺付けてたらなくすよ?」
まぁ毎日森を走り回っているエースにしてみたら遊びに夢中になればすぐになくなってしまうものなのだろう。
『大丈夫
これは私かエースにしか付けれなくて外すことができるのはエースだけ
勿論鎖も錆びたり、どこかに引っ掛かったりして壊れることもない
このペンダントは私からエースへのお守り』
エ「お守り?」
恋歌の説明を聞いてすごいペンダントだといろんな角度から見ていたが、お守りとはどういうことなのか。
『近頃エースは森に行くことが多くなったし、私も一日中ずっとエースのことを見ているわけにはいかない
で、このお守りを作ってみたの』
エ「作った?」
『変…かな?』
そう聞けば思いっきり首を横に振られた。
エ「すっげぇ気に入った!」
『ならよかった
まだペンダントなんかいらないかなって思ってたんだけどいつも身に付けていてほしくて、あまり邪魔にならない物って何かって考えたらそんなものしか出てこなくて
腕とかより首の方が気にしなくてすむかなって
あとそれにはいくつか仕掛けがしてあるの』
エ「仕掛け?」