第8章 誕生日
エ「母ちゃん、俺とこれで一緒に写真撮ってよ」
そう言って貰ったばかりのカメラを渡してくる。
あの買い物の一件以来、エースは恋歌に遠慮することを止めた。
ちゃんとあれがしたいこれがしたい、したくない、など我が儘も言えるようになった。
我が儘といっても殆ど苦にならないことばかりだったが。
それでもやはり子どもなのだから言ってくれるようになったのはいいことだと思う。
こんな可愛いお願いなら聞いてあげたい。
『いいよ』
恋歌がエースを抱いて膝の上に乗せる。
そして後ろから抱き込むような感じにする。
お互いに満面の笑みで撮られたそれは家に大切に飾られることになった。
昼は森に入ることが多くなったエースは昼食は森で自分で取ったものを食べているようだった。
変なものを食べやしないかとひやひやしていたが、その辺はどうやら強靭な胃袋と野生の勘で何とかなっているらしい。
そして言われた通りに日が落ちたら帰ってくるのだ。
恋歌は夕食の時に自分が用意したプレゼントを渡そうと思っている。
エ「ただいまっ母ちゃん」
今日も遊び終えたエースがどろどろで帰ってきた。
このただいまも自然に言えるようになるまで時間がかかった。
でもこうやって当たり前のことのようにやってくれるようになって本当によかったと思う。
帰ってくる家がちゃんとあるのだとわかってくれたのだから。
まずはエースは着替て手や顔を洗って泥を落としてきたら夕食になるとわかっているので、一目散に脱衣所に向かう。
その間に作った料理を机に並べていく。
朝に負けず劣らずの豪勢な食事だ。
綺麗になって帰ってきたエースは料理を見て目をきらきらさせていた。
エ「これ食ってもいいのか!?」
『ちゃんといただきますしたらね』
そう言えば大きな声で"いただきますっ"という言葉とともに料理を食べていく。
笑顔で食べてくれるエースに思わず笑みがこぼれてしまう。
恋歌も手を合わせて食べ始めた。