第8章 誕生日
誕生日当日。
エースはいつも通り早起きをした。
しかし今日はいつもと何かが違う。
横を見るといつも自分が起こすはずの母がいないのだ。
いつも朝起きると一番に見ていた顔がないと寂しいものだ。
寝室を出るとリビングの机に朝ごはん用に作ったとは思えないほど豪勢な食事が並んでいた。
エ「な、何だこれ?」
『あ、エースおはよ』
台所から顔だけ覗かせて挨拶をしてきたのは恋歌だ。
エ「おはよ…
なぁ今日なんかあるのか?」
『今日は特別な日なのよ』
予想通りというかなんというかエースは自分の誕生日は気にしてはいなかった。
エ「特別?今日が?」
首を傾げるエースに恋歌は台所から出てきてエースに合わせてしゃがむ。
『今日はエースの誕生日でしょ?』
その言葉を聞いてエースははっとしたような顔になった。
エ「なんで、…知って…
俺教えてないのに」
『それは企業秘密
さ、エースが顔洗ってきたらご飯食べよ?』
そう言われればふらふらと反射的に洗面所に向かってしまう。
エ「(ちょっと待て…
俺本当に母ちゃんには誕生日教えてないぞ?
じじいか?
いや、じじいからの手紙は来てないし、じじい自身も来ていない
なら、どうやって?
あーもうっ!企業秘密ってなんだよ!!)」
顔を洗いながら自分の誕生日を祝ってもらうということに戸惑いながら考えを巡らせていた。
結局答えはわからずじまいでエースは大人しく用意されたいつもより豪勢な朝食を食べることになる。