第12章 藤の家
その言葉に気分を良くした善逸は、嬉しそうに身体をクネクネさせながら、陽華に近づいてきた。
「綺麗なおねーさん♪…陽華さんてお呼びしてもいいですかぁ?…彼氏はいるんですか?」
突然の質問に、陽華が頬を染めた。
「え?えぇ、まぁ一応ね。」
陽華が恥ずかしそうに言うと、善逸は舌打ちした。
「チッ。なんだよ、男付きかよ。」
「やめろ、善逸。陽華さんの彼氏さんは、まさに眉目秀麗、容姿端麗って言葉がめちゃくちゃ似合う人だぞ。おまけに強い。善逸じゃ、ひっくり返っても勝てないぞ。」
「え?炭治郎、知ってるの?」
間違いなく、義勇の事だと気づいた陽華が驚いて聞き返すと、炭治郎は笑顔で頷いた。
「冨岡さんのことですよね?前に会ったとき、冨岡さんの名前出したら、陽華さんから、切ないような甘酸っぱい匂いがしたから、そうかなって…。」
炭治郎の言葉に、その場にいる全員が黙った。
「…炭治郎、おまえの鼻、そんなこともわかるの?…普通に気持ち悪いな。」
そう言った善逸の顔は、明らかに引いていて、炭治郎は焦って周りを見渡した。
「え、え?善逸だって、音でわかるだろ?特に恋愛系は心拍数とかでっ!」
炭治郎が同意を求めると、陽華はまた大声で笑った。
「あっはは。あなた達、本当に面白い!」