第10章 最終選別
陽華は真剣な眼差しで、義勇を見つめた。義勇は、陽華の目を見つめ返すと、静かにしゃべりだした。
「床に伏せている間、ずっと考えてた。でも、どんなに考えても、最後にたどり着く感情は、…鬼が憎い…それだけだった。家族を奪われ、友を奪われ、大切な物を…尊厳を奪っていく鬼達が…、だから…、」
義勇はそこで一旦言葉を切り、頭上の月を仰いだ。そして言葉を続けた。
「俺も鬼殺隊に入るよ。選別で何もせずに、ただ生き残っただけの俺が、果たして鬼殺隊を名乗っていいのかはわからないけど。
錆兎…あいつが死ななければ、倒せたはずの鬼どもを、少しでも俺が殲滅できれば…。俺に出来る…罪滅ぼしは、それだけだから。」
「義勇…。」
「俺は今までの自分を捨てる。もう泣かない。もう奪わせない。もう大切な物を失わないよう、強くなる。必ず。」
そう言って、義勇は陽華に笑顔を向けた。…恐らくこれが陽華の記憶の中にある義勇の最後の笑顔だった。
陽華は義勇に小指を差し出した。
「じゃ、私も約束する。これ以上悲しむ人がいなくなるように強くなる。そして義勇と一緒に、錆兎の分まで一体でも多く鬼を狩るよ。」
「うん、約束しよう。」
義勇は陽華の小指に自分の小指を絡めた。
そして、月明かりの下、幼い二人は誓いを立てた。
「それと陽華、一つお願いがあるんだ。」