第10章 最終選別
その夜は寝苦しかった。
陽華は目が覚めて、隣で寝ているはずの義勇がいないことに気付いた。
小屋の中にも外にも姿が見えない。陽華はふと思い付いて、夜の挟霧山を登った。
その日の挟霧山は珍しく霧が晴れていて、月明かりで照らされていた。
山の中腹にある修行場に付くと、大岩の上に思っていたとおり、義勇が座っていて、木々の間から見える月を見ていた。
「義勇…。」
陽華が義勇の名前を呼ぶと、義勇は静かに振り向いて、優しい顔で陽華を見た。義勇は陽華を手招きすると、こう言った。
「ここから、月が綺麗に見える。」
陽華は岩をよじ登ると、義勇の横に座った。そして、月明かりに照らされた、義勇の横顔を見つめた。
「なんか、久しぶりに義勇の顔、ちゃんと見た気がする。」
「……心配掛けて、ごめん。」
「ううん、別に気にしてないよ。」
陽華はそう言って、義勇に微笑みかけた。そして、少し考えた後、意を決したように義勇に言った。
「ねぇ、義勇。明日恐らく日輪刀が届くって、師匠が言ってた。明日、日輪刀が届いたら、私は鬼殺隊員として生きて行こうと思ってる。義勇はどうする?」