第10章 最終選別
「陽華、選別が終わるまで隠れてるんだ。鬼が来たら、全力で逃げろ!わかったな?」
錆兎はそう言うと、陽華に背を向けて走り出した。
陽華は錆兎を引き留めようとした。錆兎がもうボロボロなのはわかっていた。しかし止めなかった。どこかで、錆兎なら大丈夫だと言う、安心感があったからだった。
陽華は、そのまま錆兎の言うとおりにしたが、鬼には一度も会わず、最終日まで過ごした。
辛い七日間の疲れと緊張から、フラフラの状態で下山した陽華は、集合場所に到着して、目の前が真っ暗になった。
錆兎と義勇の姿がない。
陽華はフラフラの状態で、大勢残った合格者達に聞いて回った。
誰も二人の姿を見ていないと言う。
そんな時だった。
義勇を預けた真ん中分けの少年が、急いで話し掛けてきたのは。
義勇は選別終了後、意識混濁の状態で治療所に運ばれたと、その少年が教えてくれた。
陽華は最後の気力を振り絞り、義勇の所へ行こうとしたけれど、足が縺れて先に進めなかった。その時、その少年が肩を貸してくれた。陽華は少年に礼を言いながら、義勇の元へ急いだ。
ー義勇、お願いだから無事でいて…もうこれ以上、大事な人を失いたくないよ。