第1章 少年と妹
いきなり声を掛けられ、義勇の身体がピクリっと震えた。
「私、今日改めて思った!!私達って、いつ死んでもおかしくないよね?…もちろん、鬼殺隊に入った時から、覚悟は出来てるの。」
陽華そこまで一気に喋ると、さらに言葉を続けた。
「でもね、生きてるからには、やっぱり欲が出て来ちゃう。人間に生まれたからには、人間ぽいこと、一度はしてみたいし、後悔もしたくないっ!」
陽華が、突然ムクッと起き上がった。その気配に、義勇が肩をビクッと震わせた。
「だから、義勇!私の恋人になって!!」
「は?」
思ってもいない言葉に、義勇は思わず声を上げ、振り向いた。
「だって、一度いいから恋人っていうのを、作ってみたいの!」
「それは、俺じゃなくても…、」
「私、義勇のこと、好きだよ。」
「なっ…にを、」
陽華の突然の告白に、義勇はたじろいた。
「義勇は?どう思ってるの?私のこと。」
「いや、俺はっ、……嫌いじゃ…ない、」
「だったら、いいでしょ?幼馴染みの最初で最後の願い、聞いてよ。」
「…………、」
「……だめ?」
長い沈黙の後、義勇は覚悟を決めたように口を開いた。
「わかった。お前の願いを聞く。」
「付き合ってくれるの?」
義勇は小さく頷いた。
「付き合うって、恋人としてよ?わかってる?」
「あぁ。だからもう寝ろ。昨日も鬼を追ってて寝てない。お前も疲れてるだろ。」
「うん!…義勇、ありがとう。おやすみ。」
「おやすみ。」
そういうと、義勇はまた陽華に背を向けて、寝る体制に入った。
その背中を見ながら、陽華も布団に横になる。しかし、思い付いたように起き上がると義勇に近づいた。
そして静かに、義勇の肩に手を置いた。
「ねぇねぇ、義勇。」
揺さぶられて、義勇がゆっくりと振り返る。陽華は振り返った義勇の顔に、覆い被さるように顔を近づけると、その唇に自分の唇を重ねた。
あまりに突然の出来事に、義勇はその場に凍りついた。
陽華は、ゆっくりと唇を離すと、
「恋人なんだから、いいよね?」
とニッコリと微笑み、自分の布団に潜って掛け布団を被った。心臓がバクバクして、顔から火が吹き出しそうだったけど、顔のニヤケが止まらなかった。