第9章 ※誘惑
「は?何の話しだ?」
なぜ、そうなるんだ。と怪訝な顔を浮かべる義勇に、陽華は天元の言ってたことを説明した。
「なんで、そんな事に…(宇髄のやつ、後で殺す。)」
でも天元の言ってることは、大幅当たっていた。
事実、今日一日一緒にいて、何気ない仕草にあの日の記憶が呼び起こされないわけがなかった。本当は陽華が欲しくて欲しくて堪らない。それをずっと我慢してた。
でも最後は間違っている。
「陽華、俺は…、」
義勇は陽華の名前を呼ぶと、まっすぐとその瞳を見つめた。
「こんなこと…、お前としか…しない。」
そう言った義勇の瞳は吸い込まれそうなほど綺麗で、次の瞬間陽華は、義勇の首に手を回して抱きついていた。
「ごめん…信じてたけど、不安が消えなくて…、」
義勇は陽華の背中に回した手で、背中をポンポンと優しく叩いてくれた。
「わかってくれたなら、それでいい。…今日はもう寝よう。」
「……。」
しかし、義勇に抱きついたままの格好で陽華は動こうとしない。そんな陽華を怪訝に思い、「どうした?」と肩を叩いた。
「…寝ても…いいの?」
「ん?」
陽華は義勇の胸に顔を埋めた状態で義勇の方を見ずに小さな声で言った。
「…だって、義勇の…、さっきからお腹に当たってる。」
「っ!……ただの生理現象だ。問題ない。」
そう言って、陽華を引き剥がそうとすると、陽華はぎゅっと腕に力を入れて抵抗した。
そして、義勇に顔を向けて言った。
「…私、いいよ。…もう怖くないから。」
義勇は困ったような顔をしたが、決意したように陽華の顔を見ると、
「今度はもう止められないぞ?」
そう言って、優しく陽華を布団に寝かせた。
「うん!」
そうして、二人は深く唇を重ねた。