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【鬼滅の刃】水魚之交

第9章 ※誘惑





「わっ、義勇!どこ行ってたの?」

振り向くと、すぐ近くに義勇が立っていた。陽華が驚いて、その顔を覗き込むと、義勇はフッと視線を反らして、小さい声で答えた。

「…俺も温泉に浸かってきた。」

よく見ると、義勇も旅館の浴衣を来ている。

しかしそれよりも陽華は、義勇の頭のほうが気になった。

「ほらっ!また髪、ちゃんと拭いてない!…風邪引いちゃうでしょ?」

小さい頃からの癖が出てしまったのか、陽華が持っていた手拭いで義勇の頭を吹いてあげると、義勇が突然、陽華の両手首を掴んだ。

「お前、あまり俺に近づくな。」

「え?」

「…同じ部屋にしたり、無防備過ぎる。」

「でも私たち、恋人だし…幼なじみだし。あ…ごめん。」

義勇が顔があまりにも真剣だったから、思わず謝ってしまった。

「どんなに俺が理性で抑えつけても、止められない時だってあるんだ。」

義勇の顔は明らかに怒っていて、陽華はもう何も言えずに、しゅんと項垂れた。

義勇はため息を付くと、

「やはり、今からでも部屋を変えて貰う。」

そう言って、部屋から出ていこうとする。その義勇の腕を、陽華は慌てて掴んだ。

振り向いて、怪訝な顔を浮かべる義勇の顔を真っ直ぐ見つめた。

(あ…止めたけど、何て言えばいいか、わからない。)

このままだと、義勇が行ってしまう。義勇を引き留めるためには、なんていえばいい?

焦った陽華は思わず叫んでいた。

「わ、私が、義勇と…したいのっ!」

思わず自分で何を言っているのか、わからなくなった。顔が急激に熱を持って、赤く染まっていくのがわかる。

(こんなこと言って、ただの淫乱じゃないっ!?)

義勇の顔を見ると、義勇は困惑の表情で固まっていた。明らかに引いている。

陽華は居たたまれない気持ちになり、言い訳しようと口を開き掛けた、しかし義勇の口から、思いもよらない言葉が帰ってきた。

「了解した。お前が望むなら…、望む通りにしよう。」

義勇は、出ていこうとした身体を向き直し、陽華と真正面から向き合い、その瞳を見詰めた。



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