第8章 親友
抱擁の後、陽華は黙って、しのぶの治療を見ていた。綺麗に包帯が巻かれ、しのぶは「はい、もう大丈夫ですよ。」と、陽華の顔を見た。陽華は真面目な顔でしのぶを見ていた。
「例の計画、もう考えを改める気はないのね?」
「えぇ、もう決めたことですから。」
そういい、笑顔を浮かべるしのぶに陽華は泣きそうになるのを必死で堪えた。
それは、先日会った時に聞いた、しのぶの姉、カナエを殺した鬼を倒す方法。
「…私だってしのぶには幸せになって…欲しい。」
泣きそうになるのを堪えていたから、最後の方は声が震えてしまった。そんな陽華の手を、しのぶは優しく握った。
「陽華、これはあくまでも最終手段ですよ。私だって死にたくありませんから。」
しのぶはそう言って、ニコッと笑うので、陽華も笑い返した。でも本当はわかっている。陽華もしのぶもあの鬼には敵わないと…。
「ただ、これはあなただから打ち明けたんです。まだ他の方々には内密に。…とくに蝶屋敷のみんなには…。」
しのぶの言葉に、陽華はコクンと小さく頷いた。
「さぁ、湿っぽい話しここまでにしましょう。私はまだ聞きたいですよ、冨岡さんとのこと。」
「しのぶは面白がってるだけでしょ?」
「恋ばなは乙女の好物ですから。」
「なら、朝まで飲んじゃう?…さっき、蜜璃も見かけたから、呼んじゃおっか?」
「朝まで女子会ですか?いいですね。」
そのまま、甘露寺蜜璃を入れた柱女子三人は、蝶屋敷の一室で、朝まで飲み明かした。