第46章 ※番外編・祝、冨岡義勇生誕 帰ってきた、鬼殺隊!!
集落へと続く、長い石畳の階段を降りていくと、崩れかけた家屋が見えてきた。澄んだ空気のおかげか、月明かりでも里の様子がよくわかる。
「懐かしいね?」
陽華が呟くと、隣を歩いていた義勇もコクリと頷いた。
来た階段を振り返り、持っていた灯りで照らすと、思い出してくる。その道は里に来た時に温泉に入るために、よく通っていた階段だったこと、そしてあのホテルは温泉があった場所だったことも。
もう数年が立ち、だいぶ風化してきているが、確かに原型は留めていた。
ミシッ!
ふと、遠くに何か物音がして、全員が音のする方に、視線を向けた。
「なんの音?」
「野生の動物でも、いるんじゃないですか?」
そう言った炭治郎に、陽華が視線を向けると、炭治郎に後ろにはあった家屋と家屋の間を何かが、通り過ぎた。
「何かいる。」
陽華が呟くと、突然、
「あっ…、」
と、カナヲが小さく声を上げた。その驚いた顔に、陽華も慌てて、視線の先を見る。
「……え?」
遠くにチラチラと蠢く、小さな光。陽華が目を凝らして見ると、それは小さな火の塊だった。
「あれって、火の玉……?」
陽華が小さく呟いた。
今まで陽華は、こう言った超常現象に出くわした場合、全てを血鬼術のせいにしてきた。
火の玉が飛ぼうが、人影がチラつこうが、物音がしようが、物が目の前をぶんぶんと飛び交おうが、どんなにものすごい悪寒が、身体を支配しようとも、それは全部、血鬼術のせい。
しかし今、この世の中に、鬼はいない。
途端に陽華の身体に、強烈な恐怖が湧き上がってきた。
バンッ!!
「きゃーー!!」
畳み掛けるように、近くの家屋の扉が突然外れて、前に倒れてきた。陽華は悲鳴を上げて、義勇に抱きつく。
義勇の心にも若干の恐怖はあったが、自分より怖がってくれる人がいると、逆に冷静になれる。
「陽華、落ち着けっ!」
義勇が声を掛けると、陽華は「無理ーー!」と、義勇に強く抱きついた。
(…珍しいな。)