第45章 エピローグ
「そうなの?じゃ僕、風柱にしようかなぁ。」
あっさり意見を変えた息子を諭すように、義勇は言った。
「風柱はダメだっ!父さんは、水柱が好きだ。」
「だって、皆に嫌われてるんでしょ?」
「お、俺は嫌われてない!!」
反射的に答えてしまった義勇に、勇兎は驚きの表情を示した。
「水柱の話で、お父さんのことじゃないよ!」
「え、…あ…いやっ、」
慌てる義勇を見て、陽華はくすくすと笑った。すると突然、陽華の手の中の、幼い娘が義勇に向かって、手を伸ばした。
「父しゃん…、」
「どうした、水兎(みう)?」
陽華から娘を貰い、片手で抱き上げると、娘は嬉しそうに微笑んでこう言った。
「みうはね、父しゃんがすき。」
かわいい愛娘の発言には、とたんに義勇の顔が綻んだ。ぎゅっと抱きしめると、娘の頬にチュッと口づける。
「父さんも、大好きだ。」
「おおきくなったら、けっこんしゅる。」
水兎にぎゅっと抱きつかれ、義勇は心から幸せそうに顔で、娘を抱きしめ返した。
その言葉に、勇兎が反応する。
「ずるいっ!じゃ、僕はお母さんと結婚する!」
そう言って陽華に抱きつく勇兎を、義勇が真面目な顔で睨みつけた。
「勇兎、だめだ。お母さんはお父さんの物だ。」
「……義勇、大人げないよ?」
愛しい妻にそう言われて、慌てる義勇に、陽華は堪えきれず、とうとう吹き出した。
一頻り笑うと、陽華は全員を家の中に入るよう促す。
「ほらっ、早くしないと痺れを切らしたじぃじに『来るのが、遅いっ!』って、怒られちゃうからっ!……全員、ちゃんと、おてて洗ってね?」
「「「はーい!」」」
全員で元気良く返事する。
「ほら、水兎行くぞ?」
勇兎が、義勇の腕の中の水兎に手を伸ばした。義勇が水兎を降ろしてやると、二人は仲良く手を繋いで、家の中に入っていく。
その後を付いていきながら、陽華が後ろから声を掛ける。
「お兄ちゃん、水兎の手をちゃんと洗ってあげてね?」
「はーい!」
その返事を逞しく感じていると、後ろから義勇が声をかけてきた。
「もう、すっかりお兄ちゃんだな。」
「うん、本当に大きくなって。」
「少し前は、あんなにお前に引っ付いていたのに。…寂しいか?」
「うん、ちょっとね。」