第43章 最後の会議
「だが、ある計画が動いてる。」
陽華に目線をやりながら、義勇が小さく呟いた。
「生きると陽華と決めてから、お館様に協力を仰いだ。お館様は、産屋敷家の財力を使って、全面協力を約束してくれた。今、痣を解明する為の医療組織が結成され、動いてくれている。」
「アァ?なんだそりゃ。」
「それと、無惨戦の折、協力してくれた鬼がいたろう?…あの鬼は、鬼を人間に戻す研究や無惨を倒す為の研究の他に、医者として、もう一つ研究していたらしい。」
そこまで言うと、義勇は真剣な顔で、実弥を見た。
「鬼の超回復力、その人間への応用だ。…わかるか?上手く行けば、俺達の身体の中で起こってる変化や、組織の破壊を回復させる事ができる。」
そんな夢物語が本当に実現するのか?眉唾ものの仮説に、実弥の顔が驚きに揺れた。
「はっ、そりゃァ、実現したらすげーなァ。でもよ、当事者の俺に話が来ないたぁ、どういうこったァ?」
「陽華の気遣いだ。まだこの計画が上手くいくなんて、わからない。お前や炭治郎を、ぬか喜びさせたくないと。」
「はァ…、あいつは本当に、人のことばっかだな。」
実弥は呆れたように、目の前で桜の木を見ながらはしゃぐ陽華に視線をやる。
義勇はその横顔を見ると、言葉を続けた。
「だがなぜ、この話をお前にしたか、わかるか?」
義勇の顔が真剣な顔つきになり、実弥を見詰めた。
「この研究には、被検体が必要になる。……痣者のだ。」
その言葉に、言わんとしてることを察し、実弥が先制して問いかけた。
「……俺にモルモットになれって、ことかァ?」
「そうだ。陽華をその研究の実験体にしたくない。…どうせ一度は死を覚悟した身だ。痛くも痒くもないだろう?」
「わーったよ、俺もお前達の野望に乗ってやらァ。」
確かに四年後には、死ぬと言われたこの命で、陽華のあの笑顔を守れるなら、それも悪くない。そう思った実弥だったが、一瞬だけ不安が過った。
「……おい、その研究、間違って鬼になったりしないよな?」
実弥の言葉には、義勇は安心させるように微笑むと、
「安心しろ、人間に戻す薬ならある。」
と、答えた。その自信満々な笑顔に、実弥は深くため息をついた。