第43章 最後の会議
「輝利哉様が立派に務めを果たされたこと、御父上含め、産屋敷家ご先祖の皆様も、誇りに思っておられることでしょう。」
その言葉に耐えきれず、輝利哉の目には、涙が溢れた。
「ありがとうございます……っ、」
小さく嗚咽する輝利哉の肩を陽華は優しく撫でた。齢八歳、このか弱く小さな肩に、どれだけの責任が、重圧が、重くのしかかっていたのかは、想像も出来ない。
しかし今、大願を成就し、涙するその姿は、年相応の子供に見え、陽華達は穏やかな気持ちで、泣き続ける三人の子供達を、静かに見守っていた。
柱合会議を終え、産屋敷家を出ると、陽華は大きく伸びをした。輝利哉ほどではないが、自分も何かを大きな責任を果たして、肩の荷が下りたような、そんな気分だった。
義勇と実弥も、言葉には出さないが、きっと同じような気持ちを抱いていた違いなかった。
三人はそんな晴れやかな気分のまま、蝶屋敷への帰路についた。
蝶屋敷へ向かう道中、道の先に、満開に花を咲かす桜の木を見つけた陽華が、桜を指さして、二人に振り返った。
「見て?桜も満開だね。」
そう言って、桜の木に走り寄ると、見上げて、嬉しそうに微笑んだ。
こんな穏やかな気持ちで見る桜は、何年ぶりだろうか?鬼殺隊だった頃は、花なんか気にして見てなかった。余裕がなかった、と言うのが正しいのかもしれない。
でも鬼殺無くなったこれからは、時間も余裕もある。花を愛で、季節の移ろいを気にする時間。鬼にかけていた時間を、これからはもっと、有意義に心を潤す時間に使おう。
そうだ。鱗滝の小屋の近くに畑を作って、作物を育てるのもいいかもしれない。食材も調達出来るし、運動にもなる。
そんなことを考えていたら、突然大きく風が吹き、桜の花びらが一斉に舞い上がった。
「わぁ、綺麗!!」
嬉しそうにくるくると回り、全身で花びらを受け止めようと、手を伸ばした。