第7章 ※制御不能
すっかり日も暮れた夜の街を、義勇は駆け抜けていた。昼間得た情報から、陽華が導きだした出現場所は当たっていた。
「陽華、そっちへ行ったぞ!!」
「任せて!」
鬼は十二鬼月だった。そんなに強くはなく、間違いなく下弦の鬼。
柱二人には、簡単過ぎる任務だった。
義勇が致命傷になるような傷を追わせたが強くない分、かなりすばしっこく、するりと逃げていく。逃げた方向では陽華が鬼を待ち伏せしていた。
すぐ終わる任務だと思っていた。だが、そんなに甘くなかった。
待ち伏せた場所に、民間人が現れたのだ。致命傷を追わされた鬼は回復するのに体力を相当使う。その使ったエネルギーを補填するのは、もちろん人肉だ。
逃げてきた鬼は、一直線に民間人に向かってきた。
「きゃーーーー!!」
叫ぶ民間人を、とっさに庇うように立ちふさがる陽華の腕に、鬼の爪が入った。
「つぅっ!」
痛みに顔をしかめて、片膝を着いた。
この好機を見逃す鬼ではない、一目散に逃げて行く。
「陽華っ!」
「ごめん、逃がした!」
「大丈夫だ。まだ間に合う!」
二人は走り出した。走りながら、陽華は器用に出血した場所を紐でしばる。
鬼を追ってたどり着いた場所は、街の門だった。侵入者を防ぐため、閉じられていた門は大きく破壊されていた。
「まずいな。街の外に出たみたいだ。」
「どうする?追う?」
「行こう。もし今、あの鬼に遭遇する人間がいれば、危ない。」
「うん、そうだね。」
二人は街の外に出た。少し鼻の利く陽華は、鬼がいった方向を指しながら、夜の街道を走った。