第7章 ※制御不能
情報を集めた辺りで、待ち合わせた茶屋に向かった義勇。茶屋の前では、陽華が小さな男の子と二人で立っていた。
義勇に気づくと、陽華は大きく手を降った。
「この子は?」
「迷子君。子供が行方不明になってるって言うし、一人じゃ危ないでしょ?」
年は10そこいらか、かわいらしい顔立ちをしていた。
「一歩間違えたら、おまえが誘拐犯だぞ。」
「そう思ったけど、でも放っておけなくて。」
話を聞くと、どうやらこの街の子ではないらしい。街を出て少し行った、山の麓付近に暮らしているが、お父さんが病気になったので、お母さんと街で薬屋を営んでいる親戚のところに来たが、はぐれてしまったようだ。
義勇が少年の処遇に、思いあぐねていると、少年の腹から、『ぐぅ〜』と音がなった。
気付いた陽華が、声を掛ける。
「お腹空いた?このお兄さん、お金持ちだから、お蕎麦奢ってくれるって、食べる?」
「うん、食べる!」
「……。」
三人は近くの蕎麦屋に入って、蕎麦を食べた。よっぽどお腹が空いていたのか、一心不乱に蕎麦を食べる姿を見て、陽華は微笑ましい笑顔を見せた。
「ふふ、可愛い。ねぇ、子供が出来るって、こんな気持ちかな?」
「なっ!」
義勇が驚いて声を上げる。
「私たち、回りから家族に見られてるかな?」
「…さすがにこんな大きな子はいないだろ。」
「疑似でもこんな体験出来て、ちょっと得しちゃった。」
蕎麦を食べ終えて、義勇が支払いを済ませていると、先に外に出ていた陽華が声を上げた。どうやら、母親を見つけたらしい声だった。
義勇が外に出ると、母親らしい女性が丁寧に会釈をしていた。
子供は大きく手を降りながら、母親に連れられて行ってしまった。まだ明るいから、家に帰るまでは大丈夫だろう。
「可愛い子だったね?」
「あぁ、そうだな。情報も収集したし、とりあえず一旦宿に戻って仮眠を取ろう。夜は狩りに行く。」
「はーい。」
二人は蕎麦屋を後にした。