第42章 ※繋ぐ想い 後編
「そうだったんだ。私、あの時、もうダメかもしれないって、無我夢中で義勇の手を握って、祈ったの。その祈りが届いたんだね?」
「あぁ、しっかり届いた。陽華、本当に、ありがとう。」
そう言って、義勇は陽華をさらに強く抱きしめた。
「ふふ、どういたしまして。…それにしても、素敵なお姉さんだね。弟に忠告しに来てくれるなんて。」
「あぁ、自慢の姉だ。」
義勇の得意げに言うと、陽華は優しく微笑んだ。そして今度は自分にあった出来事を、話してあげた。
「私はね、錆兎に会ったよ?」
突然出てきた友の名前に、義勇は少し驚きながら聞き返した。
「錆兎に?…アイツ、何かを言ってたか?」
「うん、義勇にはね。…お前の謝罪は聞き飽きたから、もう墓の前で謝んなって、言ってたよ。」
「フッ、アイツらしいな。…他にも言ってたか?」
義勇にさらに聞かれて、陽華は錆兎との会話を思い返した。
「他に?うーん……もう、次の段階に入ったって、言ってた。」
「…次の段階?」
義勇が首を傾げて聞き返す。しかし、言った陽華も意味がわからずに、首を傾げた。
あの時は錆兎に会えて、少し興奮してたから、気にもしなかったが。
(……次の段階って、どういうこと?錆兎は、また会えるって言ってた…。)
そこまで考えて、陽華は突然、気づいたように目を見開いた。
「……陽華、どうした?」
「ううん、なんでもない。」
(そういう事なの?……錆兎、私に…貴方を……?)
さらに深く考え込むように黙り込むと、突然義勇の回した手が、陽華のお腹を優しく撫で回した。
「きゃっ…、ちょっといきなり触らないでよ。」
陽華が身体を傾け義勇を見ると、義勇が顔を覗き込んできた。
その顔は、少し怒っているようだった。