第42章 ※繋ぐ想い 後編
病室に帰り、義勇はベットに腰掛けると、繋いだままの陽華の手を引き寄せ、自分の前に座らせた。
そのまま後ろから、優しくぎゅっと抱きしめる。
先程の天元との会話で、陽華から笑顔が消えたのに気づいたのだろう。何も言わないが、その温もりから優しさを感じて、陽華は静かに義勇に身を預けた。
それに答えるように、義勇は陽華の首筋に顔を埋めた。
「また誰かに見られたら、いちゃついてるって、噂になっちゃうね?」
「別に言われても構わない。…でも、今日はもう大丈夫だ。鍵は掛けた。」
その言葉に陽華は身体を捻り、怪訝な顔で義勇を見た。義勇は目が合うと、得意げな顔でこう言った。
「さっき、宇髄に言われた。そういう事する時は、鍵を掛けろと。」
「と…言うことは、そういう事をする気なの?」
「いや。今はただ、誰にも邪魔されずに、お前とこうしていたかった。」
そう言うと義勇は、背中にピタリと寄り添い、前に回した手で陽華の手を取った。そのまま指先を絡めて、何度も感触を確かめるように、握りしめる。
「硬いでしょ。女の子の手じゃないよね?」
「そんなことない。俺にとってはいつまでも可愛くて、愛おしい手だ。」
そう言うと、握った手を胸の高さまで上げ、まじまじとその手を見つめた。
「…それにお前のこの手に、俺はずっと手を引いて貰ってきた。」
どんなに突き放しても、傷つけても、陽華は変わらずに義勇の傍で、義勇が迷わないように、手を握り続けてくれた。
「俺が死線を彷徨った時も、この手が俺を助けてくれたんだ。」
「へ?…私、何かした?」
不思議そうに首を傾げる陽華に、義勇はムフフと笑うと、自分にあったことを語りだした。
「…あれは夢だったのかもしれないが、死線を彷徨った時、俺は姉さんに会ったんだ。…俺は姉さんに、付いて行こうとしたんだが、反対に姉さんに、手を握って歩いてくれる人のところへ、帰れと言われた。」
そこまで言うと、義勇は握り締めた手に、さらに力を込めた。
「そしたら左手に暖かさを感じて、お前の顔が浮かんだ。…それで、帰らなくてはいけないことを思い出して、目が覚めたら、お前が俺の手を握ってくれていた。」