第41章 繋ぐ想い 前編
「でもさ…、まだ夢みたいなんだよな。」
村田が呟いた。
「もう、この世に鬼がいないなんて。夜にゆっくりと眠れる日が来るなんて、思ってもなかったろ?」
「…そうだね。私もなんか、不安だな。」
陽華は物思いに耽るように、窓の外に目をやった。
「鬼のいない世界。あんなに、望んでたことなのに、いざいなくなっちゃうと、これからどうしていいか、わかんないよね。」
陽華のその言葉に、村田の顔も少し陰りを帯びた。
「村田もだろうけど、私たちって思春期の大切な時期、鬼殺に捧げちゃってんのよね。普通に生きていけるのかなぁ。」
不安そうに顔を曇らす陽華に、村田は励ますように笑顔を向けた。
「だったらさ、これからは思春期に楽しめなかった分、青春を取り戻していけばいいんじゃね?……俺はとりあえず、恋人を作るっ!!」
村田のぶっちゃけた野望に、陽華は盛大に大爆笑した。
「笑うなっ、こっちは真剣なんだからな!…それに陽華、お前だってこれからは、冨岡との幸せな時間が待ってるんじゃないのか?」
村田の言葉に、陽華は「やだー!」と、村田の肩をおもいっきり叩き、幸せそうに二ヤついた。
一方叩かれた村田は、叩かれた肩を擦りながら、苦笑いを浮かべた。
「そういや、冨岡と言えばさ。アイツ、俺のこと覚えててくれたんだぜ?任務で会ってもウンとも言わないから、絶対に忘れてるんだって思ってたのに!」
そう言って、少し涙目で陽華に笑い掛ける村田の頭を、陽華は優しく撫で撫でした。
「おぉ、よしよし。忘れるわけないでしょ?村田は恩人なんだから…。」
その時だった。
「何をしている。」
突然声を掛けられ、村田はビクっと身体を震わせた。声の方を見ると義勇が立っていた。