第40章 柱
「隠の人が見てたの。無惨の攻撃で飛ばされた時、一瞬だけど…私の後ろにいた実弥が、私の身体を受け止めてくれたって。」
それを聞いて、実弥は思い出したように、「あぁ。」と呟いた。
「結果的にそれが、衝撃を緩和してくれて、私は助かったんだって。……だからね、実弥は何も守れなかった訳じゃないよ。」
陽華は、実弥の手を握った手に力を込めた。
「私を守ってくれたじゃない。本当に、ありがとう。」
そう言って、明るく微笑む陽華の笑顔は、お日様みたいに暖かくて、実弥は心が暖かくなるを感じた。
それと同時に顔も熱くなり、実弥は陽華から視線を外すと、ぶっきら棒に答えた。
「そりゃアレだァ、お前がちょうど、おれのとこに飛んできたから、受け止めただけだァ。結局、威力が強すぎて、一緒になって吹き飛んじまったが。」
「そうだったとしても、私は感謝してるよ?そりゃ、私の大切さなんて、玄弥に比べたら、アレだけど。そこは…ほら?大切な仲間枠って、ことで…、」
恥ずかしそうに陽華が苦笑いすると、実弥は穏やかな表情で陽華を見つめた。
「んなことねェよ。ずっと前から、お前は、俺の大切な人だァ。」
実弥の言葉に、陽華は嬉しそうに微笑んだ。
「えへ、ありがとう。私も実弥は、大切な仲間だと思ってるよ。」
「んな意味で、言ってんじゃねーよっ!」
言葉の真意に気づかない陽華に、実弥がイラつきながら、突っ込んだ。
「ん?」
「ずっと前から、好きだったつってんだよっ!いいかげん、察しろっ!」
突然の告白に、陽華の顔がみるみる赤くなっていく。その反応に、実弥の顔も熱を持ち始めた。
「だって、そんな事…一度もっ…、」
「好きな男がいる女に、言うわけねェーだろ!」
実弥が顔を赤くしながら、視線をそらした。
「……ごめん、全然気づいてなかった。」
陽華が反省するように項垂れると、実弥は小さく鼻を鳴らした。
「謝んなァ。別にお前とどうこうなりなかった訳じゃねェ。…ただお前が、俺の横で笑ってるってだけで、何度も救われた。礼を言うのは、こっちの方だァ。」
たった今だって、押しつぶされそうだった実弥の心を救ってくれた。こんな女、もう二度と出会えないだろうと、実弥は思った。