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【鬼滅の刃】水魚之交

第39章 目覚め





義勇は陽華の背中に回した手を、ススっと下へとずらし、臀部を鷲掴みした。

「きゃっ!…もうっ!」

陽華は義勇の傷口に障ぬよう、胸のあたりを優しく押し返し、少し離れると、自分の身体を確認するように手で撫で回した。

義勇は暫くその姿を微笑ましくみていたが、突然、何かを決意したように口を開いた。

「なぁ、陽華。」

名前を呼ばれ、顔を上げると義勇がこちらを真剣な顔で見ていた。

「戦いの前に、全てが終わったら一緒になって欲しいと言ったが、俺はこの通り不便な身体になった。これから先ずっと、お前にまたいらぬ迷惑を掛けることになるが、それでも、俺と一緒にいてくれるか?」

義勇の言葉に一瞬、きょとんとした顔をした。

しかし、すぐに無くなった義勇の腕に視線を向けた。手を近づけると、その肩先に触れる。

「……この腕、私を庇ってくれた時のだよね?」

「そうだ。だからもし、同情や償いのつもりで…、」

義勇の言葉の続きを止めるように、陽華の手が、肩から義勇の伸びた髪の毛に触れた。

「髪伸びたよね?流石に毎日結んであげるのは手間だから、短くしよっか?」

「あ…うん、そうだな。」

「…出会った頃の義勇はさ、いつもお姉さんにしてもらってたからって、髪紐の結び方が汚くて…、義勇が自分で出来るようになるまで、私がしてあげてたよね。」

「そんな時もあったな。」

「ご飯の食べ方だって、あんなに注意したのに、今だに口の周りにたくさん付けてる。あれだって、子供の時からいつも、私が取ってあげてる。」

「…そうだな。」

「他にも、近所の野良犬に追いかけられた時も助けてあげたし、その事で錆兎に『男ならっ!』とか言われて、泣いてるの慰めたり、怖い話聞いて、夜中に厠に付き合ったりもあった。」

「……すまない。」

「選別の時だって。一人で落ち込んで、引きこもって…、私にも師匠にも、心配ばかり掛けてたよね?」

「……うん。」

「大人になったらなったで、口下手なせいで、周りを怒らせてばかりで、私がどれだけ後処理に奮闘してたか、知ってる?」

「……。」

そこまで言うと、義勇は決まりが悪そうに黙り込んでしまった。そんな義勇の顔を覗き込むと、陽華はニコッと笑った。


「今更、少し面倒が増えたからって、問題があると思う?」



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