第39章 目覚め
陽華が目覚めた時もそうだったが、目覚めた義勇の病室には、ひっきりなしに人が訪れた。
自分が、そんなに人気あるとは思ってなかった義勇だったが、それでも柱としては慕われてはいたらしく、過去に守られたことのある隊士や隠達が、挨拶に来てくれていた。
その中でも、陽華が特に気になったのは、女の子が多いことだった。
消灯時間が近づき、病室に陽華と義勇だけになると、陽華は不機嫌な顔で義勇を見た。
「何を、怒ってるんだ?」
「…知らなかった。義勇に女の子の知り合いが、あんなにいたなんて。」
その言葉に、義勇は首を傾げた。
「いや、本当に助けたのか?…殆ど覚えていない。」
義勇のその言葉に、陽華は思わず吹き出しそうになった。
義勇はその見た目から、裏で義勇の本質を知らない女子達に、人気が高いのは知っていた。これを機にお近づきになりたいと思う女子がいても、不思議ではない。
でも当の義勇がこの調子なら、問題はなさそうだ。陽華は安心したように、義勇に微笑みかけた。
「今日は疲れたでしょ。もう寝たほうがいいよ。私もそろそろ、アオイに怒られそうだから、自分の部屋に戻るね?」
そう言って立ちあがる陽華の手を、引き止めるように義勇が握りしめた。
「…ん?」
「まだ…一緒にいたい。添い寝…してくれないか?」
そう言って、甘えるように陽華を見つめてくる。
「こんな狭いベッドで、何を言ってるのよ。…病み上がりなんだから、一人でゆっくりと寝たほうがいいでしょ?」
義勇の甘え顔に、一瞬グラつきかけた自分に言い聞かせるように言うと、義勇は捨てられた子犬ような顔で俯いた。
「……まだ、こうして二人して生き残ったことが、夢みたいなんだ。今日の朝も起きたらお前がいなくて…不安になった。だから…今夜は…傍にいてほしい。」
そんなこと言われたら、断れるわけがない。それに寂しい、一緒にいたい気持ちは陽華とて同じだ。
陽華は「いいけど、アオイに怒られても知らないからね?」と言うと、病院服の上に羽織っていた羽織を脱いで、丁寧に畳み、ベッド横の棚に置いた。
そして、義勇の傷に障らないように、義勇の左側からゆっくりとベットの中に潜り込むと、身体を付けて寄り添った。