第38章 最終決戦 夜明け
炭治郎の背中からは、無惨と似たような触手が生えていた。その姿はもう人のそれとは異なり、炭治郎が、鬼そのものになった証だった。
そして禰豆子を噛んだ。もう人間の味を覚えてしまった。理性を取り戻すのは、難しいだろう。もう殺すしかない。
(…でも、どうやって?)
絶望する陽華の目に、必死に炭治郎を説得する禰豆子の姿が写る。禰豆子は諦めていない。
その禰豆子の姿を見て、陽華は気づいたように目を見開いた。
(…人間に戻る薬っ!)
しかしその薬は今、ここにない。作ってくれたあの珠世と言う鬼は、死んでしまった。
だが愈史郎なら、作れるかもしれない。
痛む身体を推し、陽華が身を起こし、炭治郎を見た。
鬼化したばかりの今なら、全員で掛かれば、炭治郎を拘束出来るかもしれない。そして、人間返りの薬が出来上がるのを待つ。それしかもう、炭治郎を救う方法がない。
そう考えていた陽華の横を、人影が通り過ぎた。
「カナヲ…?」
陽華が名前を呼ぶと、カナヲはゆっくりと振返った。