第38章 最終決戦 夜明け
打ち拉がれる善逸の目の前で、炭治郎が伊之助に襲いかかった。それを伊之助は、防ぐように刀で弾く。
それでも尚、攻撃をやめない炭治郎に対して、伊之助は防戦一方で、迷いがあるのが、見て取れた。
陽華はそれを横目で見ながら、今にも意識を失いそうな義勇に声をかけた。
「義勇、大丈夫?」
義勇は朦朧とする意識の中、炭治郎に視線を向けた。
「……炭治郎に…人を殺させるな。あいつのまま…優しい炭治郎のまま、死なせて…やりたい。」
義勇をそう言うと、慣れない左手で刀を握り締め、身体を起こしかけた。しかし失血の為か、大きく蹌踉めく義勇を、陽華は慌てて支えた。
「もう、無理よ!!」
上弦の参と戦い、続いて無惨との戦い、さらに腕を無くしたことで、大量に出血してる。いつ倒れてもおかしくない状況だった。
自分の身体が、思い通りに動かない現実に、義勇が悔しそうに顔を顰める。義勇の気持ちは痛いほど解る。陽華とて、同じ気持ちだった。
炭治郎は、陽の光を克服した。それはすでに、陽の光をたっぷり浴びた猩々緋砂鉄、猩々緋鉱石によって作り出された日輪刀は、効果がないと言うことになる。
炭治郎に、止めを指すことが出来ない。
そんな中、炭治郎と交戦中だった伊之助の動きが突然、止まった。
そんな伊之助に、炭治郎の爪が迫る。陽華が慌てて、腰を浮かした。その目の前を、駆けつけた禰豆子が通り過ぎた。
禰豆子は炭治郎を抑えるように、抱きつく。その肩に炭治郎は噛み付き、血飛沫があたりに飛び散った。
「おにいちゃん、ごめんね!」
炭治郎の背中に回された禰豆子の手が、グッと炭治郎の隊服を握りしめた。
「ずっと私、何もわからなくなってて、ごめんなさい。お兄ちゃん一人に、全部背負わせたね?」
そう言うと、禰豆子はその瞳から、涙をボロボロと流した。