第38章 最終決戦 夜明け
騒ぎの一角にたどり着くと、そこにいた隊員達は皆、呆然と立ち尽くしていた。
おそらく、炭治郎が鬼になったと言う事実を、受け入れらずにいるのだろう。見守る仲間たちの顔には、絶望の色が浮かんでいた。
陽華と村田が、その立ち尽くす人だかりを抜けると、その先には暴れる炭治郎と、それを抑える義勇の姿が見えた。
もう充分に日が出てる。それでも炭治郎に、特段変わった様子がない。禰豆子がそうだったように、炭治郎も陽の光を、克服したのだろうと予想できた。
「義勇っ、炭治郎!!」
「来るな、陽華!!これはもう、炭治郎ではないっ!」
炭治郎を抑えつけながら、義勇が叫んだ。
獣のような唸り声をあげて、暴れる炭治郎を、義勇が必死に抑え込むが、尋常ではない力で振り払われ、その拳が義勇の顎を掠めた。
その瞬間、義勇の顎から大量の血が吹き出した。陽華が村田の制止を振り払い、走り出した。
「義勇っ!!」
さらに追い打ちを掛けるように、炭治郎から、容赦ない一撃が放たれる。
それを伊之助が間一髪、刀で弾き飛ばした。
「何してんだーーーっ!!」
反動で、炭治郎が二人から距離を取る。義勇が顎から流した血を拭いながら、蹌踉めき、その場に膝を付いた。
(失血で目が回る……、)
近くまで来た陽華が、慌てて義勇を支える。その二人を庇うように、伊之助が立ちはだかった。
「半々羽織だぞ!仲間だぞ!」
「そうよ、炭治郎!お願い、正気を取り戻してっ!」
伊之助と陽華が、必死に炭治郎に向かって叫んだ。
しかし、炭治郎はおよそ人間とは思えない形相で、陽華達を睨みつけただけだった。
その姿に、隠に連れられて来た善逸が、信じられないように戸惑った顔で呟いた。
「嘘だろ…炭治郎?」
善逸の瞳から、涙が流れ出た。
「もうみんな、戦えないよ。…ボロボロで、こんなのあんまりだ。禰豆子ちゃんはどうするんだよ。」