第38章 最終決戦 夜明け
義勇を炭治郎の元に行かせて、しばらく経った頃のことだった。
突然、遠くの方で誰かが騒ぎだす声が聞こえた。
不穏な空気を感じて、陽華は閉じていた目を開いた。そして、傍らにいた村田に声をかけた。
「……ねぇ、村田。何か、騒がしくない?」
「あぁ…、どうしたんだろ?」
怪訝な顔を浮かべながら、遠くを見つめる村田と陽華の耳に、慌てた隊員の声が聞こえてきた。
「どうしたっ!?」
「た、大変だっ!!竈門が…竈門炭治郎が鬼になった!」
その言葉に陽華と村田は視線を合わせた。
「今、水柱が…、冨岡さんが応戦してる!動けるものは、全員集まれって…、」
「でも、炭治郎だろ?…止められるのか、俺らに…、」
そう言って躊躇する隊員達を横目に、戸惑う村田の隊服の袖を、陽華はぐいぐいと引っ張った。
「村田、お願い。私を…炭治郎の所に連れていって?」
陽華のお願いに、村田は信じられないと言った顔で見返した。
「おい、馬鹿言うな。お前、頭打って大量出血したんだぞ?こんな状態のお前を、連れ歩いたら、俺が冨岡に怒られるだろっ!」
「村田、……お願い!!」
今にも泣きそうな顔で、懇願するような視線を送ると、村田は大きくため息を付いた。
「はぁ……わかったよ!ほら、起きれるか?」
村田に肩を貸して貰い、陽華は起き上がると、礼を述べた。
「ありがとう、村田。大好き。」
「…ったく。俺は昔から、お前に弱いんだよな。」
村田は陽華に肩を貸し、大きな負荷を掛けないよう、ゆっくり歩き出した。