第38章 最終決戦 夜明け
その小ささに、思わず陽華は息を飲んだ。
小さい頃、陽華達にとって錆兎の存在は大き過ぎて、こんなに小さいと思ってなかった。
それなのに自分は、錆兎に全てを背負わせて、頼り切りになっていたことを思い知らされた。
陽華は錆兎を、ギュッと抱きしめた。
「……ごめんね、錆兎……。私、いつまでも貴方に心配掛けて…、選抜の時だって…、私がもっと…、」
言い掛けた陽華の唇に、錆兎は自分の人差し指を当てた。
「俺のことはもういいんだ。お前たちを助けたのは俺の誇りだ。……他の誰でもない、お前たちがそれを否定するのか?」
そう言って、錆兎は呆れたような顔を返した。その顔の懐かしさに、陽華の顔にも自然と笑顔が溢れる。
「…それに俺はもう、次の段階に入った。」
「…次の段階?」
陽華が問いかけると、錆兎はにこやかに笑った。すると突然、ふわっと錆兎の姿がぼやけた。
「錆兎っ!…もう行っちゃうの?」
まだ行かないでほしい。縋るように錆兎の手を掴む陽華の手を、錆兎は優しく握り返した。
「お前は早く、義勇のところに帰ってやれ。アイツは昔から泣き虫なんだ。お前が面倒見てやらないと、駄目だろ?」
あのバカ野郎は本当に変わってない。そう言わんばかりに、錆兎は呆れ顔を浮かべて笑った。陽華はその笑顔に同調するように微笑むと、手の甲で涙を拭いながら、コクリと頷いた。
「俺はもう大丈夫だ。陽華、きっとまた…会える。」
錆兎は最後に優しく微笑むと、暖かい光となった。その光は陽華を身体を包みこんで、陽華の心まで暖かくしてくれた。
ー 錆兎、ありがとう。またね。
そこで、陽華の意識はまた遠くなっていった。
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