第38章 最終決戦 夜明け
「どうせ、後四年くらいでこっちに来るのよね?それまで、冨岡君との一緒の時間、目一杯、楽しんでね。」
「カナエ、あんたね…。」
変わらないカナエ節に、陽華は懐かしさを感じながらも、恨めしそうに睨み返した。
「……ほら、もう行かないと、手遅れになるわよ?」
カナエに促され、陽華はペコリとみんなに頭を下げると、来た道を戻り始めた。
しばらく歩くと、みんなの姿は見えなくなり、陽華は少し不安になってきた。そんな時だった。
「陽華?」
その不安を掻き消すように、誰かが陽華の名前を読んだ。
「っ!?」
その懐かしい声に、陽華は思わず息を止めた。
ゆっくりと声のするほうに振り向くと、そこには柔らかな宍色の髪した、優しい瞳の少年が立っていた。
「……錆兎っ!」
「久しぶりだな、陽華。……綺麗になったな。」
錆兎は陽華近づくと、その顔を覗き込み、微笑んだ。
その笑顔はちっとも変わらなく、あの辛い修行の中、何度も挫けそうになった陽華を強く、暖かく励まし続けてくれた、あの頃のままだった。
その懐かしさと嬉しさに、陽華の瞳からは、涙が溢れ出した。
「さび…と……っ…。」
「ずっとお前達のこと見てた。本当にお前達は不器用で、俺は歯痒過ぎて、成仏も出来なかったんだぞ?」
そう言って錆兎は苦笑いを浮かべた。
「お前が、俺の墓に来るたびに吐く恨み言も、義勇が来るたび吐く謝罪も、はっきり言って、聞き飽きたぐらいだ。」
「…ずっと、聞いてたの?」
陽華が恥ずかしそうに、錆兎に目線を送ると、錆兎は呆れた顔で鼻を鳴らした。
「あぁ、でもお前たちが幸せそうで、本当に良かった。」
死しても尚、陽華達を身を案じてくれる錆兎に、胸が熱くなった。
「錆兎…、有難う。」
気がつくと、陽華は錆兎に抱きついていた。錆兎の身体が陽華の腕に、すっぽりと包まれる。