第6章 音柱
いきなり義勇と二人きりにされ、陽華は少し戸惑った。でも、気を取り直していつも通りの笑顔を義勇に向けた。
「義勇、久しぶりだね。どう?答えはそろそろ出た?」
「答えは出た…と思う。」
義勇のその言葉に、陽華の喉がゴクリと小さく鳴った。
「…俺は、自分の役割を理解するのに、少し時間が掛かってしまった。待たせて本当にすまないと思う。」
「…ん?役割?」
若干引っかかる言葉が耳に入ったが、義勇が真面目に話しているので、陽華は静かに続きを待った。
「もう遅いかもしれない。でもまだ、お前が俺を望んでくれると言うなら、俺はそれに答えたいと思っている。」
「…義勇、無理してない?」
「無理はしていない。…ただお前に、他に好いた男が出来たと言うなら、話しは別だが。…さっきも…宇髄と…、」
「天元さんと?」
「遠目に見てたら、…いい感じに見えた。」
そう言って目線を反らす義勇の手を、陽華はそっと握った。
「ううん、義勇がいい。私は義勇がいいの。」
そう言って、手に取った義勇の手を頬に当て、笑顔で義勇を見つめた。義勇は安堵の表情を浮かべると、こういった。
「では、契約は続行と言うことでいいな。」
「……契約」
確かに始まりは陽華の我が儘から、強引に約束させたようなものだけど、なんか無機質な言葉にされると、胸を抉られたような気になった。
でも今はそれでもいい。義勇が自分の横に戻ってきてくれたから。これから少しづつでも、義勇の心が自分に向くように努力すればいい。