第37章 最終決戦 鬼の始祖 後編
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「冨岡さん!……冨岡さんっ!」
誰かに名前を呼ばれ、義勇は目を開けると、自分が横に寝かされているのに気が付いた。
周りにはたくさんの隠がいて、皆慌ただしく動き回っている。義勇は状況を確認しようと、身体を動かした。
「ぐあぁぁあっ!!」
突如、右腕に強烈な痛みが走り、義勇は叫び声を上げた。腕より先の感覚がない。
義勇が恐る恐るそこに目をやると、その先にあるはずの手がなかった。
(…まずい、利き腕をやられた。このままじゃ、大した戦力になれない。)
腕が無くなった衝撃よりも先に、義勇の頭に過ったのはそのことだった。
「水柱、動かないでください。今、止血してます。」
義勇の腕を治療している隠の一人が言った。義勇は朦朧とする頭を、残った方の手で抑えた。
記憶が飛んでいる。無惨から発せられた衝撃波のようなもので、吹き飛んだのまでは覚えている。腕だけじゃない、身体中が痛い。壁か何かに激突したのだろうか。
無惨はどうした?
一緒に戦っていた者達は無事なのか?
「どうなった?…無惨は?…他の者達は、無事か?」
(…陽華は?)
義勇の頭に言い知れぬ不安がよぎり、義勇はゆっくりと身体を起こした。
その時、誰かが陽華の名前を呼ぶ声が義勇の耳に聞こえてきた。
「氷柱っ!…氷渡さんっ、しっかりしてくださいっ!!」
その声のただならぬ様子に、義勇の心臓がドクンッと波打つ。どんどんと鼓動が早くなっていき、義勇はいてもたってもいられずに、ゆっくりと立ち上がった。
「冨岡さん、動いては駄目です!…腕が無くなってるんですよっ!」
義勇は隠の制止も聞かず、声のする方に向かって、覚束ない足取りで歩き出した。腕を失くしたからか、平行感覚が狂う。それでも義勇は、痛みを堪え、陽華の元へ急いだ。
その先で、義勇が目にしたのは、瓦礫に中に埋もれ、血だらけで横たわる愛しい者の姿だった。