第37章 最終決戦 鬼の始祖 後編
「………、」
全てが見透かされてる。これが時間稼ぎに過ぎないことを。
この間に細胞破壊の薬が効いて来てくれれば、ここで自分が死んでも、生きてる者達が繋いでくれる。そう考えていた。
陽華はフーッと息を吐き出した。
(私も、これでお仕舞かぁ。)
覚悟を決めたように瞳を閉じた陽華に、無惨の鞭のように撓る腕が、振り下ろされた。
ガキィィン!!
「諦めんなぁーー!!」
伊之助が叫ぶ声が聞こえ、陽華は目を開けた。
伊之助の交差した二つの刃が、無惨の一撃を止めていた。
「伊之助っ!?」
さらに、逃した筈の善逸の霹靂一閃が無惨の横っ腹を薙ぐ。
「善逸っ!?」
「逃げて、陽華さん!」
「カナヲっ!!」
カナヲが陽華の手を引き、走り出した。
「駄目よ!カナヲ、離してっ!」
伊之助、善逸が吹き飛ばされ、無惨の攻撃が陽華達に向かってくる。
それを、いつの間に復活した実弥が斬り伏せた。
だが無惨は、次々と全ての者たちを薙ぎ払うように、攻撃を繰り出した。
陽華は、前に飛ばされていく実弥を見て、手を引くカナヲを突き飛ばした。
「陽華さんっ!!」
「もういいの!みんな、やめて!」
陽華は無惨に向き直ると、強く睨みつけた。
「ウロチョロと動き回る、薄汚い蝿ども。私自らの手で、息の根を止めて貰えることを光栄に思え。」
無惨の言葉を、陽華は馬鹿にするように、声を立てて笑い飛ばした。
「…私達が蝿なら、集られてる貴方は、汚物その物ってことになるけど、いいのかしら?」
次の瞬間、無惨の目が怒りに燃え上がった。
凄まじい爆音を上げて、先程放たれた衝撃波と同じ物が、無惨から発せられた。
「陽華っ!!」
「義勇っ!!」
倒れていたはずの義勇が、最後の気力を振り絞り、陽華を守ろうと右手を伸ばした。
陽華の手がその手に掴もうと、義勇に向かって差し出された。しかしその手は触れることなく、陽華は後方へと、勢いよく吹き飛んだ。
そして、陽華の目の前は暗くなった。