第37章 最終決戦 鬼の始祖 後編
「義勇ーー!」
陽華は、無惨の攻撃を搔い潜り、一番近くで戦っていた義勇の名を呼んだ。陽華の姿を確認した義勇は、驚いて叫んだ。
「陽華、お前は戦いに加わるな!」
陽華は義勇の忠告を無視すると、作戦を伝えた。義勇は驚いた顔を見せたが、陽華が微笑むと、静かに頷いた。
義勇の返事を確認して、陽華はまた走り出した。
しかし陽華が近づいた好機を、無惨が逃すわけがなかった。行冥の元に近づこうと暗躍する陽華に、無惨の攻撃が集中する。
「陽華っ!!」
一番近くにいた義勇が、割って入るが全て凪斬れず、残った無惨の腕が陽華に襲いかかった。
寸でで避けたが、急に陽華の身体が傾いた。
(これ…、蜜璃の時のっ、)
凄まじい吸引力で、引き寄せられる。
しかし無惨に届く手前で、小芭内が起こした、蛇の幻影が無惨の腕を弾いた。さらに目の前に鋭い刃物のような風が舞い、気が付くと陽華は、実弥に抱えられていた。
「実弥、ありがとう。」
「お前が殺られたら、指示する奴が、いなくなんだろうがァ!!」
実弥はそう言うと、向かってきた攻撃を片手で薙いだ。
「不死川、礼を言う!」
陽華の無事な姿に安堵した義勇は、小芭内の近くに着地すると、実弥に礼を叫んだ。
陽華は抱き抱えられたまま、実弥に話しかけた。
「実弥、作戦があるの。」
「アァ?」
陽華が作戦を伝えると、一瞬だけ実弥は怪訝な表情を浮かべたが、すぐさま「了解した!」と呟いた。
その時だった。
ヒュッ!!
無惨の攻撃が、陽華と実弥に集中した。攻撃の勢いで実弥は、陽華を離してしまった。
「きゃっ!」
「陽華っー!!」