第37章 最終決戦 鬼の始祖 後編
(……透けて……見える?)
陽華はその言葉に聞き覚えがあった。
産屋敷家の書庫、始まりの呼吸の剣士の項目に、そんなことが書いてあった。鬼殺隊最強と謳われた、日の呼吸の剣士。その人は他人の身体の臓器、筋肉の隅々に至るまで全て、透けて見えていたという。
陽華は手に持った、愈史郎の紙眼を見つめた。
(この血鬼術は、視野に特化した術。…全集中で全ての神経を目に集中させ、これを着けたら、私にも見えるかも…。)
陽華は思い切り空気を吸い込んだ。身体中に酸素が行き渡り、神経が活性化されて行くのを感じる。陽華はそのまま活性化された神経を、眼だけに集中させた。
そして紙眼を着け、眼をゆっくりと開けた。
その瞬間、陽華の心臓がドクンっと波打った。
(……み、見えた。)
無惨の身体に場所を変え蠢く、臓物達の姿が浮かび上がった。
その異様な姿に、陽華は自分の目を疑った。
(こいつ、脳と心臓が何個もあるっ!)
これが無惨の真の姿。
人間成らざる姿が垣間見え、陽華は恐ろしさに震えた。
しかし、それと同時に活路が見えてきた。無惨は頚を斬っても死なない。
だが、頚を斬って死ななくとも、あの急所の臓器十二ヶ所を、一気に叩くことが出来れば、朝を待たずして無惨に止めをさせるのではないか。
赫刀は現在四本。
今戦っている柱四人が、一人三つずつ担当する。見えてる陽華と行冥、恐らく小芭内、その指示で動けば、他の二人ならば、例えあの動き回る臓器達であろうと必ず仕留めてくれる。
気づいたら、陽華は走り出していた。
確実に急所を突く為には、作戦を知られてはならない。鬼殺隊には隊員にだけにしか解らない、指文字の暗号がある。だが、伝えるためには近寄るしかない。
途中陽華は、伊之助たちにも作戦を伝えた。