第37章 最終決戦 鬼の始祖 後編
無惨は苛ついていた。
自分の周りをチョロチョロと動き回る、虫けらどもの攻撃は、どれも無惨にとっては、蚊に刺されるよりも軽いものだった。
なのにそれでも、先程より少しづつだが、攻撃を喰らうようになってきた。さらにこちらの攻撃が当たり辛くなった。
一人では、何もできない虫けらどものくせに、完璧な存在に近い、自分の身体を傷つけるとは。無惨にとって、こんなに腹立たしいことはなかった。
(…あの女、あいつの指示のせいか?)
無惨の目が、陽華を捉えた。
夜明けが近い。早く皆殺しにして、この場を離れなくてはならない。しかし、動き回る虫けらの攻撃に圧されて決めきれない。逃亡しようにも四方を囲まれて、動けなかった。
(あの女…先に片付けるか。)
無惨の目がきらりと光った。
(……今、目が合った?)
無惨の間合いから、離れているはずなのに、絡みつくような視線を感じ、陽華はゾワリと身体を震わした。
陽華は嫌な予感を感じつつも、次に有効な一手を切出すため、無惨の身体を注視した。
その時だった。注意深く無惨を観察していた行冥の顔が、驚きの表情に変わったのは。
何かに気付いた行冥の視線が、ちょうど無惨の近くで、攻撃に転じようと動き回る小芭内に向いた
「伊黒ーーーっ!!身体を注視しろ!」
突然、行冥が叫んだ。
「見え方が変わらないか!?他の者でもいい、身体が透けて見えないか!!」
その言葉に、陽華の動きが止まった。