第37章 最終決戦 鬼の始祖 後編
「おらアァァァ!死ねエェェェ!!」
実弥が、赫い光を帯びた刀を構え直すと、無惨へと走り出した。
陽華の作戦だと、実弥は援護班だったが、粗の見え始めた無惨にはもう必要ないと踏み、実弥の好きなようにやらせることにした。
実弥は暴れまわる触手を薙ぎ倒し、大きく飛ぶと、無惨の頭上へと躍り出る。そのまま振りがぶった刀を、無惨の脳天目掛けて、振り落とす。
その刀が、無惨の腕をその根元から、削ぎ落とした。
「くっ…、この塵どもがっ!」
無惨が吠え、目の前に着地した実弥を攻撃する。
ー 風の呼吸 肆ノ型 上昇砂塵嵐
実弥は技を仕掛け、その攻撃を吹き飛ばした。
風が轟音を立てて舞う。それを目眩ましにして、飛び出した義勇が無惨に斬りつけた。
反対側の腕まで斬り裂かれ、怒り狂った無惨の触手が義勇に向かってくる。しかし義勇は、それを凪で全て払った。
そんな義勇に、実弥が怒りの形相で走り寄った。
「冨岡ァ、テメェ!!俺の前に、入ってくんなァァ!!」
「お前が遅いから、加勢に入った。」
義勇は顔も見ずに涼しい顔で答えると、また無惨に向かって走り出した。それを実弥は、額に青筋を浮かび上がらせながら追いかけ、さらに義勇に噛み付いた。
「陽華が来るまで、情けねェ顔してやがったくせに…、上等だァ!あの糞野郎を殺ったら、次はお前だァ!覚悟しとけェ!!」
義勇は真正面から受け止めた攻撃を弾き返すと、真面目な顔で実弥に言葉を返した。
「それまで、お前が生きていたら、考えといてやる。」
「アァ?テメェー!!相っ変わらず、上から目線だなァ!!」
実弥はブチ切れ寸前の顔で、自分に向かってきた数本の触手を、一瞬で薙ぐ。
「ほらそこぉ、喧嘩すんなーっ!!」
陽華が二人を嗜めるように叫んだ。実弥が舌打ち混じりに刀を構え、義勇も無惨に向き直ると、同時に走り出した。
(これ、イケちゃうんじゃない?)
陽華はそう確信した。冷静さを失った無惨の攻撃は、確実にその精度を落とし、こちらに反撃の好機を与えている。
無一郎が残してくれた、赫刀への手掛かり。
しのぶ達の老化薬の効果もあるのだろう。恐らく無惨はまだ気付いてない。自分が少しづつ、体力を削られていることに。
みんなが…鬼殺隊が、確実に無惨を追い詰めていた。