第37章 最終決戦 鬼の始祖 後編
「!?」
「伊黒!?」
そのまま小芭内は、まるで見えない何かに引っ張られるように攻撃を避け、無惨の間合いの外に投げ出された。
その飛ばされた小芭内を、陽華が受け止めた。
「くっ…すまない、陽華。」
「…ねぇ、何があったの?」
もう間に合わない、駄目だと思った。しかし、小芭内は生きている。
「わからない、何かを引っ張られた。」
あの状況で小芭内が助かる。その有り得ない出来事に、陽華は不思議そうに戦場に視線を戻した。他の柱達も、無惨でさえ、驚いた表情を浮かべていた。
すると次の瞬間、訝しがるように動きを止めていた無惨の右腕が、何かに斬られたかのように切断された。
「!!!」
見えない刀で、ざっくりと斬られた。そんな感じだった。驚く無惨の様子を見ながら、陽華の頭の中にある事が浮かんいた。
(……血鬼術?愈史郎君は札を使えば、姿を消せると言っていた。何者かがそれを使って姿を消し、無惨に攻撃している?)
そう陽華が予測していると、今度は無惨の左腕が、散斬れ飛んだ。
何かに気づいた無惨が、探るように目線を巡らせた。そして次の瞬間、
ヒュンッ!!
無惨の触手が、鋭く風を裂く音が響かせながら、暴れまわった。その先端が、何かを切り裂いたような音が三回続けて鳴った。
「いだァァ!やだァァ、もう!!」
「くっ…!!」
無惨の攻撃により、そこに姿を表したのは、伊之助、善逸、カナヲの三人だった。陽華の予想通り、三人のおでこに貼られていたらしい愈史郎の札は、裂かれ、辺りに散らばった。
「いっ…てェェェ!この糞虫が!!」
無惨に攻撃を受け、怒った伊之助が悪態をつく。その姿を確認した行冥が、三人に声を掛けた。
「お前達、生きていたか…!」
「死んでたまるか、ボケェ!後俺、この紙いっぱい持ってるからな、拾って来てんだぜ!!何枚切られても、山程あるんだよ、お前の攻撃なんざ…」
伊之助が言い終わる前に、無惨の触手が襲ってきた。それを伊之助は得意の柔軟な動きで避ける。
「うわいィィ!!」
「無駄口をきくな!!」
調子に乗りすぎた左之助が、行冥に怒られた。