第36章 最終決戦 鬼の始祖 前編
「さてと。」
陽華は立ち上がると、隊服に付いた埃を払い、刀を確認した。少し刃こぼれしているが、問題なさそうだった。
「村田、私そろそろ行かなくちゃ。炭治郎のこと、お願いね。それと、向こうの方で蜜璃…恋柱も手当てを受けてるから、血清を持っていってあげて。」
村田が頷くのを確認すると、陽華は村田に背を向けた。その背中に、村田は急いで声を掛けた。
「陽華っ!…俺が言うのもなんだが、死ぬなよ。」
振り替えると、村田は今にも泣きそうな顔をしていて、陽華は苦笑いを返した。
「今回ばかりは約束出来そうにないけど、努力はするね!ありがとう、村田。」
村田と話すのもこれが最後かもしれない。本当に窮地の時に、いつも助けてくれた村田。感謝の気持ちを込めて礼を言うと、今度は愈史郎が近づいてきて、陽華を引き留めた。
「おい、これを持っていけ。」
そう言って愈史郎は、鴉達が首もとに付けていた物と類似した紙切れを、陽華に渡した。
「俺の血鬼術は、視覚を思うままに操る。見えざる物を見ることも、お前の姿を無惨から見えなくすることも出来る。上手く使えば、戦闘に役に立つ筈だ。」
「へぇ。愈史郎君の血鬼術って、やっぱり便利♪ありがとう。……あ、そうだ!もう一つ聞いて置かなくちゃいけないことがあった。」
陽華は愈史郎の目を真っ直ぐ見つめた。
「……無惨に使った、薬の効果を教えてほしいの。」
自分たちに、圧倒的に足りないのは情報だ。