第36章 最終決戦 鬼の始祖 前編
陽華は戦場へと急ぎながらも、頭の中で状況を整理した。あまりにも自分と掛けはなれた存在に畏怖し、自信を失くし、我を忘れていた。
自分の武器は情報分析と補佐。
愈史郎の話だと、無惨に使われた薬は四つ。
人間返り
老化
細胞分裂阻害
細胞破壊
人間返りは分解され吸収された。今は老化の薬が効いている筈だ。産屋敷邸襲撃からおよそ五時間。
しのぶが仕掛けた老化の薬は一分間に五十年。今、無惨は役九千年は老化していることになる。
始祖の寿命がどれくらいなのか、陽華には少しも検討付かないが、昨夜初めて相まみえた時より、姿が変わっていたことに違和感を覚えていた。あれが薬の効力なのだとしたら、老化現象は確実に、無惨の中で起きていて、身体にも影響を与えている。
次の分裂阻害。産屋敷家の書庫で読んだことがある。始まりの剣士が初めて無惨を追い詰めた時、無惨は自分を小さい豆粒程度に分裂させて、逃げ仰せたという。今回もそれで逃げられたら、終わっていた。だが、その心配はないと言うことになる。
そして最後の細胞破壊。これが与える影響は大きいだろう。もし功を奏したなら、あの超回復力を上回ることが出来る。無惨を確実に疲弊させ、弱めることが出来る。
「しのぶ、やっぱりあんた、天才ね。」
陽華は天国にいるだろう親友を想い、空を見上げた。
待ち望んだ夜明けは近かった。
ー 最終決戦 鬼の始祖 前編 完