第36章 最終決戦 鬼の始祖 前編
刃物のように鋭い切れ味の触手だけでもやっかいなのに、あの口の吸引力。緊張感や精神面でも体力を削られる柱達。加えて身体をじわじわと蝕んでいく、無惨の血。
行冥達が来てくれたのに、状況は悪くなる一方だった。
連携は取れている。度重なる合同任務や柱稽古のおかげか、お互いがどう動くのかも、窮地を陥った時の援護も、全員で補い合うことが出来ていた。でもその他の攻撃は、全て個人で動いていて、無駄な動きが多い。もっと全体を見れて、効率よく動けるよう、指揮する者が必要だ。
(せめて…もう少し人数がいれば、作戦を考えることが出来るのに…、)
陽華は唇を噛み締めた。その時だった。
ドクンっ!
突然、全身の血管が大きく波打った。身体全体が軋むような激しい痛みを感じ、陽華は顔を歪ませ、立ち止まった。
(あぁ、やばい。足元がフラついてきた。)
このままだと、夜明けが来るまでに全員力尽きて終わる。
ビュンッ!
陽華はその痛みに気を取られ、死角から襲いかかる無惨の一撃に気付くのが遅れた。とっさに刀で受け止めるが、その勢いは消せず、陽華は後方へと吹っ飛ばされた。