第36章 最終決戦 鬼の始祖 前編
「遅れて、すまない。」
そう言って鬼殺隊最強の男、岩柱・悲鳴嶼行冥は、自信の武器である斧に、鎖で繋がれた鉄球をブンブンと振り回した。
その登場に気を取られた無惨を、今度は実弥が、背後から刀で縦に真っ二つにした。もちろんの直ぐ様再生されるが、実弥はさらに油を掛けて火を点けた。
さすがに燃やされるのは不快なのか、ずっと涼しい顔を崩さなかった無惨の顔が、怒りで歪んだ。
「小賢しい真似を!!」
「…テメェには、これくらいが似合いだぜェ。」
痛手にはならないだろうが、無惨の気分を害すことには成功したようだった。実弥は無惨から一定の距離を取ると刀を構え、そして無惨を睨み付けながら、吐き捨てるよう言った。
「ブチ殺してやる…この塵糞野郎!!」
この窮地に頼もしい仲間が来てくれた。陽華は顔を綻ばせながら、実弥に走りよった。
「実弥っ!!」
「陽華、待たせたなァ?」
「本当だよ。こんな大切な待ち合わせに遅れて来るなんて、私が彼女だったら、怒って別れてるところだよ!」
ボロボロな姿で、軽口を交えながら悪態を吐く陽華に、実弥は呆れたように微笑んだ。
「そりゃァ、すまなかったなァ。……だが、」
実弥は軽く謝ると、片手を上げた。それに反応して、陽華も片手を上げた。
パァンっ!
ぶつかり合った掌が、大きく音を立てる。
「こっから…反撃と行こうぜェ?」
そう言ってニヤッと微笑んだ実弥に、陽華も微笑み返した。