第36章 最終決戦 鬼の始祖 前編
陽華は無惨の攻撃を刀で防ぎながら、何処か法則性や弱点がないか、見つけ出そうと模索した。しかし無惨の攻撃は、考える隙間を与えてはくれない。
(…だめっ、攻撃が速すぎて何も考えられないっ!!)
炭治郎が倒れたと言っても、柱が二人も増えたのに、無惨の勢いは衰えることはなかった。寧ろ、背中から生えた触手が増えたことで、さらに激しさを増し、息つく間さえ与えない。
次々と襲いかかる攻撃を受けきれず、とうとう無惨の一撃が陽華の太股を切り裂いた。
「くっ!(まずい…、喰らったっ!)」
喰らった傷口から、血が吹き出したその瞬間、
「ぐはぁっ…っ!」
突如、身体中の血が沸騰したかのように熱くなり、体が硬直した。
(これが…無惨の血。身体が…熱いっ!)
「陽華ーー!」
動きの止まった陽華に、義勇の援護が入る。義勇は攻撃を凪で払うと、陽華を庇うように立ちはだかった。
「大丈夫か!!」
「義勇!!」
義勇も脚や腕から出血している。自分も攻撃を喰らっているのに助けに来てくれた。嬉しい反面、また気遣わせてしまったことに申し訳なさを感じた。
「大丈夫、ありがとう!」
陽華は心配させまいとそう叫んだが、無惨の血の事を知らずに、呼吸で血の巡りを遅らせてなかったら、すぐに倒れていた。
(…もう喰らわないようにしなきゃ…、)
一撃でもこの威力、そう何度も喰らえない。陽華が緊張感を強めたその時だった。無惨の攻撃を受けた蜜璃が、苦しそうに胸を押さえて動きを止めた。
「あぐっ…、」
「甘露寺!!」
「みんな、自分のことだけ守って!!お願いっ!」
そう叫ぶ蜜璃に、無惨の触手が襲いかかる。
「蜜璃ーー!!」
間に合わない。誰もがそう思った次の瞬間、蜜璃を守るように飛んできた鉄の球が、無惨の触手を爆散させた。
「行冥さん!!」
陽華は、蜜璃の窮地を救ってくれた人物を見て、喜びの声を上げた。