第35章 最終決戦 邂逅
「きぶ…つ…じ?」
目の前に突然現れた無惨のその姿に、陽華は一瞬戸惑った。匂いも顔も間違いなく無惨だが、産屋敷邸の爆発の中で見た姿とはだいぶ異なっていたからだ。
しのぶ達の薬の効果なのか、それとももう人間に擬態することさえも必要ないと判断したのか、その姿は醜悪な鬼そのものだった。
そしてそれを鬼舞辻無惨と認識した時、炭治郎の心拍数が激しく上がった。今にも斬りかからんとする炭治郎を鎮めるように、義勇が声を掛けた。
「炭治郎、落ち着け。………落ち着け、」
しかし義勇自身が今にも爆発しそうな殺気を放っていて、それはまるで、自分自身に言い聞かせているようにも見えた。
無惨は突然現れた陽華達を一瞥すると、ゆっくりと口を開いた。
「しつこい。」
開口一番、無惨はそう呟いた。
「お前たちは本当にしつこい。飽き飽きする。心底うんざりした。口を開けば、親の仇、子の仇、兄弟の仇と、馬鹿の一つの覚え…、」
無表情で淡々と話す無惨が、何を言っているのか、陽華には一つも理解が出来なかった。
ー 全てを忘れて、普通に暮らせ?