第35章 最終決戦 邂逅
「義勇さん達は、ここにいてください。俺、匂いで無惨の居場所が解らないか、近くを確認してきます。」
炭治郎は、二人にそう言うと走り出した。二人きりになると陽華は義勇に近づいた。
「…義勇。私、痣が出たよ。」
「そうか、俺もだ。」
その答えに陽華は嬉しくなった。どんなに稽古しても、痣が出ない事を義勇は気にしていたから。陽華の痣が出た時もそうだったが、やはり極限の状態でしか、痣は発現しないのだろう。
そしてそれとは違う意味で、ホッとした自分がいた。これでもし生き残ったとしても義勇を置いて先に逝くことはない。同い年の二人は、同時期に寿命を迎えることが出来る。そしてもし、この戦いで陽華が死んでも、義勇は数年の寿命を全うすればいい。
恐らくこの戦いで死ぬ確率が高いのは、力も非力な自分の方だと陽華は確信していた。そしてそれは、陽華が尤も怖れていたことだった。
(…もし私が死ねば、この優しい人はまた自分を責める。次はきっともう耐えられない。)
すると突然、義勇の手が陽華の頬に触れた。驚いて義勇を見ると、義勇は驚くほどの優しい表情で陽華を見ていた。
不安が表情に現れていたのを悟ったのか、義勇は安心させるように陽華に微笑み掛けた。それは今まで義勇から感じたことがないほど穏やかで、陽華は心が安心していくのを感じていた。その瞬間、気づいた。
(…そうか、本当に変わったんだ。義勇は、もう大丈夫なんだね。)
陽華は頬に触れた義勇の手を握り返すと、微笑み返した。