第35章 最終決戦 邂逅
すると突然、花子が鳴き出した。
「カアァァ!新タナ報告キタ!行冥、実弥、無一郎、玄弥、四名ニヨリ、上弦ノ壱撃破ー!」
その報告に安堵の表情を浮かべた陽華だったが、その後に続いた報告に衝撃が走った。
「無一郎、玄弥ハ格闘ノ末、死亡ー!!」
「そんな……、」
陽華は思わずは歩みを緩めた。
目の前が暗くなった。自分よりも若い子達の命が、簡単に儚く散っていくという現実。どうしようもない喪失感に捕らわれ、自然と涙が溢れてきた。
(…むいくん、玄弥。)
玄弥…実弥の弟。柱稽古で会ったことがある程度だが、兄同様口下手で兄さん想いの良い子だった。報告をよると、玄弥は実弥の目の前で亡くなったことになる。実弥は大丈夫だろうか?
それに無一郎。無一郎に至ってはまだ十四だ。類い希なる才能を持ち、尤も先を期待されていた隊士だった。自分なんかより、無一郎が生き残った方が、よっぽどこの先の戦いで役に立っただろう。
(ううん、弱気になっちゃダメ…。)
陽華は静かに首を振ると、涙を拭った。こんなところで歩みを止めている訳には行かない。何の役に立つか?そんなこと考えている場合じゃない。
しのぶ達の命を無駄にしないためにも、自分に出来る精一杯をするしかないのだから。
陽華は前を向くと、何処へと続いているのかわからない廊下を走り出した。