第34章 最終決戦 上弦の弐
そんな三人のやりとりを見ていた童磨が喋り掛けた。
「なんか、仲良さそうに三人でおしゃべりしてるけど、俺を無視しないでよ。続き、やるの?やらないの?」
涼しい笑顔を向ける童磨に、陽華は微笑み返した。
「お待たせしちゃって、ごめんなさい。しのぶの遺言通り、今から私達が地獄へ堕としてやるから、覚悟しなさい。」
そう言うと、陽華達は同時に刀を構えた。
三人で戦っているうちに解った。童磨は伊之助にとっても因縁の相手だった。
伊之助の母親を殺して喰った話を嬉々として語る姿に、陽華達はさらなる憎悪を膨らませた。
「いい加減にしろ!この下衆がっ!」
「どうしようもない、糞野郎ねっ!」
陽華とカナヲが怒りに、童磨を汚い言葉で罵る。
その一連の話を黙って聞いていた伊之助が、怒りに身体を震わせながら、静かに言葉を紡いだ。
「本当に奇跡だぜ、この巡り合わせは。俺の母親と、仲間を殺した鬼が、目の前にいるなんてなァア!」
そう言って伊之助が、童磨を睨み付けた。
「謝意を述べるぜ、思い出させてくれたこと。ただ頚を斬るだけじゃ足りねェ!」
伊之助は刀を強く握りしめると、童磨に刃先を向けて、大声で叫んだ。
「テメェには、地獄を見せてやる!!」
「猪に育てられたというのに、よくそんな言葉で知ってるね。だけど、間違ったことも覚えたみたいだ。この世界には、天国も地獄も存在しない。」
そのまま童磨は、どこぞの教団の教祖様のように、天国と地獄についての持論を語り出した。そして最後に、
「つくづく思う、人間て気の毒だよねぇ。」
人間を小馬鹿にしたような言葉を発し、その言葉に伊之助の怒りが爆発した。