第34章 最終決戦 上弦の弐
一年前
陽華は怪我した腕を看て貰う為、蝶屋敷に訪れていた。
診察室に向かう廊下の先に親友、胡蝶しのぶの姿を発見して、声を掛けようと陽華は近づいた。
しかし、近づいた陽華は、しのぶの様子がおかしいことにすぐに気がついた。
しのぶは足取りの覚束ない様子でよろめき、窓枠に手を掛けて自分を支えていたが、ガクッと足を折るとそのまま崩れ落ちた。
「危ないっ!!」
落ちる寸前のところを陽華の手が間に合い、なんとか支えた。
「しのぶっ!」
しのぶが陽華に気付き、顔を上げた。その顔は真っ青で、もうすぐ冬だと言うのに、額には止めどなく汗が流れ出ていた。
「あ…、陽華。」
「ちょっと、どうしたのっ?」
しのぶは虚ろな瞳で陽華をみると、優しく微笑んだ。
「…風邪を引いてしまったみたいです。柱なのに、不甲斐ないです。」
「風邪?そんなわけないっ。…今、アオイを呼んでくるからっ!」
そう言って、しのぶから離れようとする陽華の手首を、しのぶが掴んで止めた。
「待ってくださいっ!…お願い、私を部屋まで連れていって…ください。」