第34章 最終決戦 上弦の弐
刀を構えた二人を見て、童磨は楽しそうに笑った。
「痣者と戦うのは、初めてだなぁ。そっちの娘も初めましてだし、もう少し遊んであげるよ。」
その言葉に、陽華とカナヲは同時に動き出した。
カナヲと連携して、童磨に攻撃を仕掛ける。
狩る為じゃない、作戦を悟られないよう、時間を稼ぐため。
しかし相手は上弦の弐。そんな簡単ではなかった。痣を発生させた陽華の速さは、もう順応された。次々と技が放たれ、攻撃よりももう、身を守ることに専念するしかなかった。
何度目かの攻撃を受け流し、童磨の隙を着いて攻撃に転じた。陽華は氷の粒を振り払い、童磨の前に躍り出ると刀を奮った。しかし…、
(いない!?)
陽華の刀は空を斬っただけだった。次の瞬間、背中に激痛が走った。瞬時に後ろに回った童磨の扇が、陽華の背中を引き裂いたのだ。
その場に崩れ落ちそうなる陽華に、間髪入れずに童磨の血鬼術が襲う。
ー 寒烈の白姫
氷の妖精のような像が冷たい吐息を吐き出した。陽華は振り返り、両腕を身を庇うように上げて後ろに下がった。
その吐息を直に浴びた腕に、焼けつくような痛みが走った。
陽華は童磨から距離を取ると、崩れ落ちるように膝を着いて座り込んだ。
きっと遊んでいるのだろう。背中の傷は深くない、だが最初の斬られた時に相当出血してる。さらに出血したとなると…、急に目の前の景色が霞んできた。
「あれ?もうお仕舞いかな?少しは期待してたんだけど、残念だなぁ。」
少しも残念じゃなさそうに、童磨が言う。
心配して近づいたカナヲが、陽華を庇うように童磨との間に立ちはだかった。
情けない。後輩に守られて、柱の自分が頑張らなくちゃいけないのに。痣まで発現させたのに、何の役にも立たない。
(……私が柱?)
陽華は、やっと気がついたように、自嘲気味に笑った。