第34章 最終決戦 上弦の弐
噂には聞いていたが、再生速度が尋常じゃない。頚以外の攻撃は意味がない。
なんとか懐に入りたいが、技が広範囲過ぎて入り込めない。頚を斬られるのを防ぐためか、多くの技が自分に近づかせないようになっている。
まるで相手が近づけず、ヤキモキとしている姿を楽しんでいるような。
本当に卑しい鬼。
陽華は童磨を睨み付けると、冷たく言い放った。
「貴方の技、まるで逃げるために作られてるみたい。そんなに鋭い武器を持っているのに、自分から行くわけでもなく、獲物をじわじわと追い詰める血鬼術。」
そこまで言うと陽華は一旦言葉を切り、嘲笑うように微笑みながら言葉を続けた。
「その目に刻まれた階級も、こんな姑息な技を使って、手に入れたの?」
陽華の言葉に童磨の顔つきが少しだけ変わった。
「挑発してるのかな?…でも、俺は優しいからね、そんな安っぽい挑発で怒ったりしないよ。」
もちろん、乗るわけないことはわかってる。さっきから、この鬼が感情を露にしているところを見ていない。笑顔も涙も嘘っぱち過ぎて、感情が見えない。もしかしたら、ないのかも。
「陽華さん!」
そんなことを考えてると、カナヲが近づいてきた。陽華が視線を送ると、カナヲも何も言わずに頷き、刀を構えた。
「カナヲ、貴方はあの鬼を撹乱するだけでいい、あまり近づき過ぎないで?」
陽華はカナヲにそう言うと、深く息を吐き出した。気持ちを切り替えなければいけない。さっきは怒りで我を忘れてしまい、斬りかかってしまった。
今は、時間を稼ぐだけでいい。
陽華は静かに刀を構えた。